JSATトップ English
JSAT
JSATについてJSATのサービス投資家の方へ
会社情報プレスリリース/お知らせグループ会社紹介採用情報
JSATのパブリシティ
パブリシティ
寄稿集 月刊「B-maga」

2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
JSATの取り組み
JSATのパブリシティ
電子情報通信学会 技術報告(衛星通信研究会)
次世代CSデジタル放送 DVB-S.2/H.264 | MPEG4 AVC 実証 −伝送路評価実験報告−
JSAT株式会社 : 水野 勝成 馬場 俊明
社団法人電波産業会 : 三木 豊
1.はじめに
2.DVB-S.2の概要
3.実証実験の方法
 
3.1 DVB-S.2変復調器
3.2 実証実験の種類、測定項目
3.3 予備実験等によるパラメータの選定
3.4 衛星実伝送実験
4 実験の結果とその評価
 
4.1 実証実験の種類による測定項目
4.2 HPA入出力特性
4.3 送信スペクトラム
4.4 送信スプリアス特性
4.5 エラーフリー確認
4.6 受信スペクトラム
4.7 C/N対BER特性
4.8 受信限界C/N
4.9 各種CSアンテナでの受信確認
5.実験のまとめ
6.むすび
地上デジタル放送の開始により大型液晶テレビが大いに普及し、HDTVが身近なものとなった。CSデジタル放送においては東経110度衛星においては一部HDTV放送があるものの、そのほとんどはSDTV放送であるため、早期のHDTV化が期待されている。
CSデジタル放送の場合、限られた衛星中継器にどれだけ多くの伝送容量を確保するかが課題である。
より多くの伝送容量を確保できる方式として、ETSI DVB-S.2による伝送方式[1]とH.264 | MPEG4 AVCによる情報源符号化方式を組み合わせる方式が考案されており、米国・EchoSTARや独・Premiereではこの方式によるHDTV衛星放送が開始されている。
DVB-S.2方式は未だ日本においては実績が少なく、未知な部分が多い。次世代のCSデジタル放送の放送方式として制度化する場合、一度決定するとこの放送方式は変更が難しい。したがって、慎重な実証を行っていくことが必要であり、一方、新方式導入をふまえ大胆なパラメータの決定も一考すべきである。本実証はその考え方に基づき、実証実験を行っている。
なお、H.264 | MPEG4 AVCの情報源符号化に関する画像に関する実証は別稿[ HDTV画像評価実験報告 ]により報告する。
DVB-S.2とは、ETSI(European Telecommunication Standard Institute:欧州電気通信標準化機構)により標準規格化され,衛星放送の伝送路規格としては現在世界的に最も一般的に使われているDVB-S [3]の上位規格である。その伝送基本性能は、単位周波数当たりの周波数利用効率および所要C/Nに改善が図られている。
変調方式に注目すると、DVB-SがQPSK(Quaternary Phase Shift Keying:4相位相変調)のみ規定されていたのに対し、DVB-S.2ではQPSKに加えて、8PSK(8-ary PSK:8相位相変調)、16APSK(16-ary Amplitude and Phase Shift Keying:16値振幅位相変調)、32APSK(32-ary APSK:32値振幅位相変調)が追加された。さらに、フィルタ特性として、DVB-Sのロールオフ率α=0.35に対して、DVB-S.2でα=0.25およびα=0.2が追加された。
また、LDPC (Low Density Parity Check code:低密度パリティーチェック符号)とBCH (Bose-Chaudhuri- Hocquenghem multiple error correction binary block code:誤り訂正用ブロック符号)の組み合わせにより誤り訂正符号の一層の強化や、低C/N時でも変調方式や誤り訂正符号の符号化などの物理層伝達情報が伝送可能なペイロードヘッダーの追加、低C/N時の同期特性を改善する同期パイロット信号の追加が行われた。
伝送方式の設定形態についても機能が充実し、一定の変調方式および誤り訂正方式で伝送するCCM (Constant Coding and Modulation)や異なる伝送方式で複数の信号の多重が可能なVCM(Variable Coding and Modulation:可変長符号変調)が規定されている。更に、インタラクティブサービス向けとして,受信状況を双方向通信で送信側にフィードバックし、受信状況にあわせて伝送方式を変えるACM(Adaptive Coding and Modulation:適応型符号変調)が規定され、計3種が標準化された。
1シンボルで3ビット以上を伝送する8PSK等の多値変調方式は、そもそもDVBにおいてはデジタルSNG(Digital Satellite News Gathering)向けの伝送路規格DVB-SNG方式としてDVB-S方式とは別に規定されていた。これを、DVB-S.2として衛星放送、デジタルSNG、インタラクティブサービスのフォワードリンク等、広く衛星通信一般に利用できる規格として検討され、ETSI標準として2004年に制定された。
DVB-S.2はこのように広範囲な用途に対応できる方式である。しかし、衛星放送を目的とする方式としては、その一部の機能で十分であり、また受信機の確実な動作と低廉化のためには使用する機能の範囲を明確に規定しておくことが望ましい。
そこで、変調方式は8PSK(8相位相変調)、伝送方式の設定はCCM、誤り訂正符号長は標準の64800ビット、ストリーム多重数は単一トランスポートストリーム、ロールオフ率は0.2をその機能の範囲と明確化した。誤り訂正率等、その他のパラメータについては、実証実験によりその範囲を確認しつつ、決定した。
なお、最新のETSIの文章ではDVB-S2という表記が用いられているが、本稿では従前の表記であるDVB-S.2という表記を用いたのでご留意願いたい。
 
本実証実験ではDVB-S.2の変復調性能が伝送性能を大きく決定する可能性があるので、変復調器については、できるだけ多くのメーカー、機種により実証を行うことが望まれる。
もっとも、実験時において入手できる機器に限りがあったため、変調器では局内折り返しによる実験ではRohde & Schwarz社Broadcast Test System R&S SFUを、衛星実伝送実験ではRadyne ComStream社DM240を用いた。また復調器は両実験ともにSTマイクロエレクトロニクス社製STB0899(評価ボード)をそれぞれ用いた。
実証実験は、局内折り返しによる実験、シミュレーションによる解析実験、衛星実伝送実験の3通りにより、各測定項目を必要に応じて測定する。
測定項目として、HPA入出力特性、送信スペクトラム、送信スプリアス特性、周波数安定度、受信スペクトラム、C/N対BER特性、受信限界C/N、各種CSアンテナでの受信確認である。
変調の位相数、ロールオフ係数、誤り訂正率、パイロット信号挿入の有無などのDVB-S.2に規定されるパラメータは多種多岐にわたるが、放送サービスを行う際に候補となる範囲で候補を絞っておく必要がある。
シンボルレートについては、27MHzの衛星中継器(トランスポンダ)にできるだけ多くの容量を収容するために、予備実験等を行った上で、23.3037Mspsを候補とした。
符号化率については、現行の狭帯域CSデジタル放送の所要C/Nが電気通信技術審議会答申諮問第74号により8dBと規定されていることから、所要C/Nが8dBを超えない範囲とする。シンボルレート同様に、予備実験等により符号化率3/5と2/3において、所要C/Nが8dB未満であることが確認されたため、符号化率として3/5及び2/3を候補とした。
衛星折り返しの衛星実伝送実験は、JCSAT-4A号衛星を用いて、JSAT横浜衛星管制センター(YSCC)内の設備により行った。
前述の測定項目について、必要に応じて、局内折り返しによる実験、シミュレーションによる解析実験、衛星実伝送実験を行って検証した。
HPAの入力レベルを変化させ、その時の出力レベルを測定した。出力レベルが37dBm〜50dBmの範囲であれば、十分な線形特性が得られることを確認した。
地球局の送信HPA出力点のスペクトルをスペクトルアナライザで観測した。同時に占有帯域幅も測定した。測定時のHPA送信レベルは、本HPAで衛星折り返し検証を行う際の実運用レベルよりやや高いレベルに相当する43dBmに設定した。また、周波数はCSで使用される帯域(14GHz〜14.5GHz)の中心周波数14.25GHzに設定した。
27MHz帯域幅の衛星中継器を利用する地球局の送信波の占有帯域幅は、衛星折返し波の総合周波数偏差を想定した上で27MHzに収まるように上限を26.9MHzとして評価する。
局内折り返しによる実験により、ロールオフ率α=0.2、23.3037Mspsのシンボルレートのときに占有帯域幅が25.9MHz(下記、図-1)という結果を得て、26.9MHz以内に収まることが確認された。
HPA 定格最大出力270W送信時においても、電波法の規定である-50dBc以下のスプリアス強度であることを、スペクトラムアナライザによって確認した。
近年開発されている変復調方式の中には、ターボ符号のように一定の値よりBER値が下がらないエラーフロア現象が指摘されている。この現象が発生すると情報源符号化に大きな影響を与える可能性もある。
そこで、この現象がDVB-S.2方式で発生しないことを確認するため、C/N対BER特性測定の予備的実験項目として、ビット誤りがほぼ皆無となるBER値として10E-12レベルの特性が得られるように、十分に時間をかけてC/N対BER特性を測定し、エラーフリーの確認を行った。
その結果、IF折り返しにて、100時間程度の長期の測定を行うことで、10E-12レベルのBERも測定できることを確認した。このBERの領域であれば実用上、エラーフリーとみなすことができるので、エラーフリー状態を確認することができた 。
IF折り返しと衛星実伝送により受信スペクトラムを取得した。IF折り返しでリグロウスが発生していないことを確認し、衛星実伝送では近隣トランスポンダへの与干渉/からの非干渉がないことをあわせて確認した。
IF折り返しと衛星実伝送によりCN対BER特性を測定した例を図-2、図-3に示す。両者の比較により固定劣化が0.5dB程度で存在しているものの、C/N 8dB以下で候補パラメータで伝送上問題ないことを示した。
C/Nを次第に低下させていった場合に同期限界となる遮断C/Nおよび、C/Nが次第に増大していった場合に同期捕捉可能となる捕捉C/Nの両者を測定した。なお、同期限界の判定は、PL ヘッダ中のSOF(BPSK変調)同期ではなく、所望のTSパケットが受信できる状態で判断した。
詳細は割愛するが、FEC R=3/5および2/3において、パイロット信号あり・なしのいずれにおいてもC/N 8dB以下で同期補足可能である結果を得た。したがって、これらのパラメータにおいても、既存のCSデジタル放送と同様のアンテナ径で受信が可能であることを示すことができた。
市場で販売されている3社の民生用のCSデジタル放送用受信アンテナ(40〜45cm)で受信状態を確認した。衛星実伝送実験中に復調器で復調した映像をモニタで提示し、それぞれ15分間以上にわたり映像を確認した。
本実証ではDVB-S.2における23.3037Msps、ロールオフ率α=0.2、変調方式 8PSK、パイロット信号あり・なし、FEC R=3/5および2/3という候補パラメータにおける伝送路特性を測定し、既存のCSデジタル放送との伝送路性能と比較した。その結果、所要C/N値は従前のCSデジタル放送の8dBと同様に規定して差し支えないことをエラーフリー確認の実験結果等から確認することができた。
すなわち、これらの候補パラメータを採用する限り、既存のCSデジタル放送の同じアンテナ径(例、本州等では45cm)であっても、同一の衛星中継器において伝送容量を30〜50%増大させることが可能であることを示した。
この結果は、次世代のCSデジタル放送におけるHDTVの普及に大いに貢献するものと考えられる。
放送方式として長期にわたり利用することとなるDVB-S.2上の諸パラメータの選定などは、再現性の確保のためにも長時間かつ慎重なデータの積み重ねが必要で誤判断は許されない作業である。
本実証は社団法人電波産業会 デジタル放送システム開発部会 同CSデジタル放送高度化作業班のもとに行われた。
得られた候補パラメータとその実験結果は情報通信審議会における検討にも大いに寄与し、CSデジタル放送の高度狭帯域伝送方式として現に制度化されつつある。今後のCSデジタル放送におけるHDTV放送に実際に用いられることが期待される。
なお、実証に用いた各種機器・測定装置等の一部には、独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)による平成17年度 通信・放送融合技術開発促進助成を受けている。
最後に、本実証実験を実施するにあたり、総務省、NHK放送技術研究所、株式会社KDDI研究所および社団法人 電波産業会 デジタル放送システム開発部会 同CSデジタル放送高度化作業班 参加各社にはご指導および多大な協力をいただき、ここに感謝する次第である。
文献
[1] ETSI, EN 302 307 V1.1.2 , Digital Video Broadcasting (DVB); Second generation framing structure, channel coding and modulation systems for Broadcasting, Interactive Services, News Gathering and other broadband satellite applications, June 2006
[2] 馬場俊明,水野勝成,三木豊,”次世代CSデジタル放送 DVB-S2/H.264 | MPEG4 AVC 実証−HDTV画像評価実験報告−”,信学技報 SANE/SAT2006 2006年12月 (投稿中)
[3] ETSI, EN 300 421 V.1.1.2, Digital Video Broadcasting (DVB); Framing structure, channel coding and modulation for 11/12 GHz satellite services, Aug.1997.
戻る ページトップ
プライバシーポリシー お問い合わせ サイトマップ リンク COPYRIGHT(C)2008 JSAT CORPORATION.ALL RIGHTS RESERVED.